ラジオ福島 「玄侑宗久・丹羽太貫 放射線を語る」(14/03/29)書き起こし概略


 2014.03.29  ラジオ福島玄侑宗久・丹羽太貫、放射線を語る」 書き起こし概略

 

 

 

(深野アナ)

 皆さんご機嫌いかがでしょうか深野健司です。東日本大震災から三年余りがたちました。来月一日に田村市都路(みやこじ)地区の避難指示が解除されますが、いぜんとして復興のスピードが遅いというふうに感じていらっしゃる人も多いと思います。その復興の足かせになっているのがこの放射線だと思います。

 

福島県内にとどまることを選んだ県民にとって、心の奥底には常に放射線への不安を抱えていらっしゃることでしょう。ここからの一時間は「玄侑宗久・丹羽太貫、放射線を語る」、福島県民が心の奥底に抱える放射線の影響について真剣に真正面から一時間お話を進めてまいります。それではお二方をご紹介いたします。

 

まずは玄侑宗久さんです。よろしくお願いいたします。(よろしくお願いします)。2001年「中陰の花」で芥川賞を受賞されまして、今年三月、先日です、「光の山」で芸術選奨文部大臣賞を受賞されました。そして震災直後に民主党、管政権時代復興構想会議の委員も務められました。そして丹羽太貫さんです、よろしくお願いします。(よろしくおねがいします)。放射線生物学がご専門でいらっしゃいまして、京都大学名誉教授、そして福島県立医科大学特命教授でいらっしゃいます。現在、国際放射線防護委員会ICRPの委員を務めていらっしゃいます。

 

まずはあの玄侑さんが実は丹羽さんとお話をしてみたいという事を私に話してくださったんですが(はい)、まずなぜ丹羽さんとお話をしようと思われたのですか。

 

 

(玄侑氏)

 あの、震災直後にですね、人づてに、あの、こうしてはいられないといって、福島県に移り住んでこられた変わった学者さんがいるという話を聴きまして、あのまあ、お目にかかりたいと思って、以前にお目にかかったんですけれども、まあ大変該博な幅広い方で、何ものかまだよくわからないんですけれど・・・(笑い)。

 京都にお住まいがありながら、福島に移り住んでこられたというそのお気持ちとですね、移り住んで三年近いわけですけれども、その現況を、あのうかがいたいなと思って、今日はこういう組み合わせで話したい、と思いました。

 

 

深野アナ)

 (はい)という事は、丹羽先生は、それをうけて、なぜ福島で生活をする決断されたのでしょうか。

 

(丹羽氏)

 あの、まず、情報としては2012年の九月にわたし福島医大に赴任いたしました。あの、それまで何をやっていたかと言いますと、東京で小さな、大学を卒業してからですが、東京で小さなベンチャー会社をやっていました。


それで事故が起こって会社の方も忙しかったのですが、あの立場上放射線審議会と言うところの委員をさせられまして、私はこれまでずっと放射線の研究、とくに生物に対する影響それから広島長崎での被爆者の様々なデータ、そういうものに非常に興味を持って勉強もしまた研究もしてきた立場で、放射線審議会で審議はしてきましたが、そもそも福島の現場を知らずして、これ、放射線を語るというのは、どうも問題であるというのは、事故のすぐあとから感じました。ただ、あの、審議会が忙しくまた会社も忙しかったので身動きが取れなかったのですが、2012年になって、どうしてもという事で会社のほうも少し軽減されましたし、会社を辞めまして福島医大の非常勤のポジションで移らせていただいたという事であります。


それであの、やはり自分で思っておりましたように、私自身は放射線の生物影響を、線量があってリスクが出るという、非常に単純なサイエンスのサイドからだけ考えておりましたが、福島にきて、やはり放射線の問題というのは、それ以上に、あの、広がりをもって人々に襲いかかるふうをつぶさに拝見させていただいております。それは私自身が福島市内にいて、それからときどき郡部に出かけて行ったりする程度なので、十分ではありませんが、それでも東京にいるよりは、よほど様々な情報を得ることができたと思っております。それで私自身なぜという事に関しましては、やはりこれはあの、研究者として放射線をやっていた、それで今も国際放射線防護委員会の委員をやっておる、そういう中でさらに放射線をきっちり理解したいという思いで動いてきたというふうに申し上げます。


 


(深野アナ)

 まあ、ICRPの委員というのは世界にはそれほど大勢いらっしゃるわけではないですものね。

 

(玄侑氏)

 そうらしいですね。

 

(深野アナ)

 何人ぐらい今いらっしゃるんですか。

 

(丹羽氏)

 えーとね、あの、今のところ主(?)委員会と言うのと、それから第一第二第三第四第五、それから委員会が六つあります。その六つで各々23.4人、4.5人までなので、それほど大きい組織ではない。で、NPOであります、だからみんな手弁当で出かけていますから。本職を持ってるから、どたばたして忙しい方がいっぱいいましてですね、あの、まあそれでも世界一流の放射線に関する学者の方が集まっておるという、そういう組織でございます。


 


(深野アナ)

 はい、まずは甲状腺についての話から今日は進めていこうと思うんですけども、玄侑さん、あの、専門家の意見がことごとく、こう信用されなくなった現在と言うのがありますけれども、どういうところからこういう状況になっちゃったんでしょうかね。


 


(玄侑氏)

 おそらく、震災直後に専門家の方々が、まあご厚意から入ってこられたり、県民に語りかけることで不安を取り除こうとされたんだと思いますけども、あの、あの当時の福島県民というのは、あの、もしかすると爆発するんじゃないかという恐怖におびえていたわけですよね。(そうです)。チェルノブイリと同じようなことになるんじゃないかと。と言う中で、あの、これくらいの線量はどういう、あの、その、大丈夫ですよと、そういう話をされた。で、笑っていればなおストレスがなくていいでしょうみたいな話はですね、到底あの当時の福島県には受け入れられなかったですよね。それが非常にこう感情的なバッシングにまで高まっていって、いわゆる放射線の専門家たち、生物学、防護学、影響学全部にわたってですね、あの、インターネット上では御用学者と言うリストが作られて、で、もうじゃあ誰に話を聞けばいいのか、と言う状況になってしまったというのが非常に不幸なことだったと思うのですが。で、マスコミもそれにあの、まあ、相和してですね、要するにこう危険と言ったほうが聞いてくれる、読んでくれる、見てくれる、要するに売れ筋の情報の方向に傾いていってしまったという事があると思うんですね。で、やっぱり、この混乱した現状をもう一回整えていただけるのはやっぱり専門家だと思うんですよ。あのー安心と安全と言うのは、この国では何故か二つ重ねて言いますけども、安心と言う心情的なものは統御しきれないですけども、安全だと言うのはやっぱり学問的な基準があるべきで、それについてやっぱりきっちりもう一回専門家の方に伺いたいと。そういうことで丹羽先生に伺いたいなあと思いました。


 


(深野アナ)

 そういう意味で言いますと、この甲状腺については今福島で検査が進められている中で、子供でがんが見つかったという報道もされております。これについては皆さん不安を抱えている方も多いと思うのですけれども、ちょっとそこにまずメッセージを投げかけていただきたいと思うのです。丹羽先生から。


 


(丹羽氏)

 はい。

 あの甲状腺癌と言うのは、チェルノブイリの時に大体事故後四年ぐらいで非常に小さい子供さんにそれが見られた。これは小さい子供さんに甲状腺がんが出るというのは非常にまれなことなので、これは大変という事になって世界が震撼としたという事があります。実際これは放射線ヨードが原因であったという事が確定されたケースであります。で、あの、まあ世間で言われる百万人に一人という甲状腺がん、それに対して福島はずいぶん多いんじゃないの、だからこれは放射線ではないですかという話をよく聞きます。あの、それについて申し上げられることは、どうですかね、福島の場合はそもそもその、県民健康調査が始まった理由の一つとして甲状腺がんの調査がありまして、えーっと、非常に早くから調査が始まっています。で、なぜこんな早くから始めたかという事ですけど、日本の甲状腺がんと言うのは実はデータがないんです。どういうデータがないかというと、甲状腺がんと言うのはふつうなんかおかしい、癌ができたらしいといって子供さんを両親が連れてこられるあるいは大人で来る。すでに病気が発症してからの方が病院に来るというシステムでこれまでデータがとられていました。でも最近はその前にきっちり診断する非常に高度な診断技術がありまして、その診断技術の、超音波検査なんですが、その超音波検査もものすごく進歩しましたここのところで、だから非常に小さい一ミリ単位の小さな結節まで分かる時代になってしまいましたので、でそういうような技術で一応今のところの状況を知らなければならいと。で事故前の状況と同じであろうという、事故直後の何年かの検査も含めて調べましょうと言うのが今の状況です。


それで、非常にたくさんの甲状腺がんが見つかってきたというのが、今日にいたって、その数が従来と違うじゃないの、という議論があるのでまた問題が錯綜しております。


ただこれの場合は、あの、全く違う癌というか違うものをふたっつ比較しておる。百万人に一人言うのは今も申し上げたように、実際の癌になってきて病院にきた人がその小児では百万に一人と言うのが普通の状況、それがチェルノブイリで増えたという事なんですが。福島の状況っていうのは、子供さんの健常な方を調べてみると、癌あるいは癌に近いものがけっこうたくさんあるよねと、しかも思春期であるわけで。二つ違うことがあって、まず検査の方法が全く違う、だからそれの問題ともう一つは、実際起こっている集団の年齢が片やゼロ歳から四歳五歳と言う若年の場合と、福島の場合はほとんどが思春期の子供さんです。でこれは全く違うものであると、という事で、これとその百万人に一人をもって福島の評価をするわけにはいかない、というのが研究者の間での一応コンセンサスになっています。


 

(玄侑氏)

 あの、先生。

 思春期にいったん表れて、しこりが表れて、それがいつの間にか消えるというのも、今回の調査で分かってきたという面ではないですか。


 


(丹羽氏)

 そうです、おっしゃる通りです。


 

(玄侑氏)

 あの-、我々人がなくなったときにですね、まあ死因、直接的な死因、いろいろ聞いていくんですけれど、死後解剖をされた場合に、よくあることとして、あ、実はこういう癌を持っていたっていう、でも全然死因に関与してこないんですが、それで非常に多いのが甲状腺がんと前立腺がんなんですね。要するに持っているのに悪さをしないので全く気にしないでいたと。(そうです)で、開いてみたらそうだったという。ですから、思春期のしこりもそうですけれども、発症にまでに至らなくて抱えている人と言うのは実はたくさんいたんだけれども(おっしゃる通り)、それが今回の超音波検査で精密に調べたので、分かってしまったため(そうです)率が上がってしまったわけですけど、でも比較対象のために弘前甲府と長崎ですか、そこで調べてみたのと比較すると、むしろ向こうの方が少し多いんですよね。(そうですね、はいそうです)。甲状腺にまつわるヨウ素の話は、あっという間に放射性ヨウ素っていうのは半減期を迎えてしまって、もう2011年の6月位にはもう測定できないレベルになっているわけですよね。ですからまあ、それ以後にまあそのリスクはないわけですよね。(そうです)でその事をやっぱり、その後も気にする方がいるというのはやっぱりこう情報不足だと思うんですけれども。まあ、リスクと言うのは結局あるのが当たり前で、それを乗り越えていくのが普通のことですよね。


 


(丹羽氏)

 放射線の嫌なことは目にも見えないから検出のしようがないから避けようがないと、だから逃げるしかないという事になりますが、あの、まあ個人線量計を使えは、可視化ができるというのが放射線のポイントなので、放射線防護のサイドから言えば、なるべく自分の放射線の状況は把握していただきたいと思っております。


 


(深野アナ)

 まあその健康影響については放射線の健康影響についてはもう少しお話を進めていただきたいと思っておりますが、甲状腺がんについては、今あの検査が進められていまして、先ほど一ミリ程度ほどの結節を調べることができちゃいました、みたいなこう言う言い方をされましたが、それぐらい技術が発達していまして、今どんどんどんどん、こう甲状腺がんたるものを探している状態が続いているわけですよね。ということは、こう見つけられるっていうことが多くなるわけじゃないですか。(そうです)


 (玄侑氏)

 心配の種が増えてきたですね。

 

(深野アナ)

 そうですねだからそれを調べ続けて、たとえば今度甲状腺癌が、親としては見つかったらとるという選択をする方が当然多いとおもうんですよね。悪さをする可能性が少ないとしても。やっぱり不安ですから。そうするとこんど甲状腺を取るリスクとか、ここを傷つけるリスクという事も当然、反面あるわけですよね。そのあたりのお話をちょっと聞かせていただければと思うんです。

  


(丹羽氏)

 これは私、あの、臨床医ではありませんし、MDでもありませんから、私のようなものが言うのがいいかどうかわかりませんが、私の理解では、昔の手術と違って今の手術は特に甲状腺を全摘するわけではないと、やはり部分切除であり、もう一つはコスメティックサージェリーと言う言葉をお聞きになったかもしれませんが、いわゆるその綺麗にやるための、たとえば私のように年を取ったものが顔をリフトするというような(笑い)、そういう技術が進んできて、傷跡が驚くほど少ないんですね。私の友達で四十台で甲状腺の手術をした方がいますが、全くこのあたりに傷跡がない。もちろんケロイド体質かそうでないとかで違いがあるとは思いますが、甲状腺の御専門の福島医大の鈴木先生になんかにお聞きすると、いや本当にもう綺麗だと、あのー手術の後はまずはあまり気にしなくていいぐらいにようになるんだというふうに言っておらます。そのあたりの技術の進歩は非常に進んだんではないかという事が第一点あり。それから甲状腺を取るってことで、甲状腺ホルモンが足らんとか足るとかいうふうな問題も、これは今のところは全然ない、そういう手術はしないと、いうことで部分切除でちゃんとやるという事なので。とることのリスクと言うのはあまりない、ただまあ、こんなところ来られるのは嫌ですやん、それはあると思いますが。

 

 

(深野アナ)

 それではここで、小さい子供を持つ父親母親のインタビューを取ってありますので、お聞きいただきましょう。

 

女性A(多くの子供たちの遊び声を背景にして。以下同じ状況)


本当は大丈夫なのかなと言う思いはありますけれども、そこらへんがやっぱりちょっと心配なところは、はい、あります。どんな時に?やっぱり外で遊んでたりしてても、常になんかこうー、その放射線の何かそういう物質とかがあるのかなと思うと、常に体内に入ってきてしまっているのかなと言う、それがこう蓄積されていって今後どうなるのかなと言うのはまあ正直なところはありますけれども、それももうしょうがないのかなっていう、はい。

  


女性B

 あのー、建物とかこういう所は、除染も進んでいるけれど、実際にこういう他の上の山とかそういうところは結局除染されないわけだから。結局本当になくなるのかなと言うのは思います。日頃気を付けているものは、もう 最初のころは意識してましたけど、だんだんそれも考えなくなっています。はい。


 

男性A

 やはりあの、今までにない、歴史の中でない、こういう事件ですから、いまこうやって子供を遊ばしていますけど、実際将来本当に親の判断がよかったのか、まあそういうことが本当に、あのー、大きな不安ですよね。ただ あの子供が外で元気に遊ぶというのは大切だと思うんで、そこは、と言いつつも、どんどん外で遊ばせたいと、いうところが本音です。


 

(深野アナ)

 と、今親御さんの、いま インタビューをお聞きいただきましたが、


玄侑さんはどのようにお感じになりました?


 


(玄侑氏)

 あのー、やっぱり放射線を受けるってことが、なんか放射能がたまるみたいな、蓄積することのように感じて不安がっている方が多いんだなっていう事を思いますねー。

 で、今、あの、原発由来の放射能で問題なのは、セシウム137なので、ガンマ線だけですから、体を突き抜けるわけですよね。(はい)細胞の修復力に関する研究が比較的新しいという事があって、ここ十年十五年の間に、あの進歩してきたと思うんですけども、そういう成果を入れてかんがみると、あの、全く蓄積を気にする必要はないと私は思うんですが、丹羽先生どうなんでしょうね。

  


(丹羽氏)

 あのー、それは非常に面白い、私が一番好きな領域なんですが、あのー、修復って問題でDNAの傷を治す機構は当然あります。ところがもう一つあの最近明らかになりつつあるのが、悪い細胞を捨てちゃうと、そういう機構もあります。(はいはい)それで、あの、それも基礎研究はずいぶん進んでいるのですけれど、我々の体の中で分裂増殖してる細胞はもとになるのが幹細胞と言われている細胞でこれは、各々の組織、骨髄とかあるいは腸管とか肺とか、そういうところにいて、肺の細胞を作ったり造血系の細胞を作ったり腸の細胞を作ったり、あるいは皮膚でもそうですけど。元祖のやつっていうのは非常に低酸素のところで守られていてあるだけじゃなくて、そこにいることで幹細胞である、そこから追い出されてしまうと、すぐ分割するという性格を持っています。そうするとここの中でですね、いつも幹細胞がひしめき合っていて、俺がここに、だから、ちょうどあの座布団のゲームがあるじゃないですか、(ハイ 椅子取りゲーム)ああ椅子取りゲーム、あれとおんなじで、あのーだからちょっと椅子に座りが悪い人はすぐに追い出される。そうすると分化しつつ外に放り出される。分化してしまうとあとくされなしと、ということがありますので。細胞レベルで、修復する、悪い細胞を殺す、それからそれでもまだ残っている奴で、椅子の座りの悪いやつは追い出すと、そういう三つぐらいのレベルでいわゆる悪い細胞に対抗しようとしておる。そうするとその追い出すときとか修復するときって、非常にゆっくり放射線を受ける時はこういう機構は働きやすい、急速に受けると確かに働きにくいのですけれど、それが1000ミリシーベルトを一発で浴びるという事じゃなくて、一ミリシーベルトを一年で受けるというような場合には、こういうような機構はよく働くという事が分かり始めております。


(深野アナ)

 うーん、でもそういった中でこう福島の子供たちが、たとえば鼻血が出やすいとか下痢をしやすいとか、こういう噂もあるわけなんですけれど、かたや。どういうところに自分の心のよりどころを持っていけばいいのかって、非常に難しいと思うんですよね。


(丹羽氏)

 はあー、私は、あの、これは皆さんに一生懸命言ってるんですけれど。自分で線量を測ってどれぐらいかを見るのが一番いいんじゃないかと思っています。と言うのは私は常にこれを持ってますから、個人線量計を持ってますけど、(はい)、これで福島で生活していて年間私の予測される線量が、1ミリシーベルトです。福島市内にいて、で、東京に二三日出張があります。で東京で得た線量から逆算して一日二日の線量から一年でいくらとなったら、大体東京は低いので0.5くらいです。でも関西に行って、花崗岩地帯の多いところへ行くとやはり0.8とか9とか下手したら1いきます。その程度であるというふうなまず事実があります。これは事実です。だからそのような自分の線量を把握することで、ご自分のよりどころにする。だから、専門家の言う事を聞かなくてもいいんですよ、別に、ご自分の判断が一番大事だとおもいます。


(深野アナ)

 実は、あの、うちの家族が放射線の不安から完全に解き放たれたのは、家族で関西旅行に行ったときに線量計を持っていったら、うちの嫁がなーんだと言って帰ってきた、っていうので、うちの家族はみんな心配しなくなったんです。(ああそうですか)


(玄侑氏)

 私もあの、一時講演に線量計を持っていきましたけれど(持っていかれましたね、はい)、やっぱりあの私がいた京都の嵐山のあたりは、毎時0.4マイクロシーベルトぐらいありましたし、神戸にいくともうちょっと高いところがあったり、まあそれがもとで、三春町の未生プロジェクトと言うところで全国のお寺さんに線量計を頼んで、年間の線量を測っていただいているんですけど、やっぱり、こう、なーんだですよね。(そうですね)。で、あの、やっぱりその情報としてある程度必要だと思うのは、たとえばあのスペースシャトル山崎直子さんがちょうど2010年の四月ですか、十五日間ディスカバリーに搭乗してですね、宇宙に行ってきましたよね。あの間の被曝量がまあ、一日1ミリシーベルトと言う計算のようですけども、約15ミリシーベルト。これ、宇宙で被曝するのと、あの福島県でまあ同じ量くらい被曝してしまったのとなにか違いますか。

 

(丹羽氏)

 あのー、それは研究事実はいっぱいありまして、スペースシャトルにいろいろな、そのー実験生物をバクテリアから酵母、培養細胞、それからネズミ、メダカ、日本のメダカが乗ってあがったのですけれど、それであげて放射線がどのくらい浴びたかと言うのも評価して調べた実験があります。それで線量と言う面から考えて、線量が同じであれば、それほど生物影響が変わるわけではないと、まあ片や無重力で片や重力があるという違いはあるけれど、生物学的な影響と言うものでは差がないいう風に我々は理解しています。

 

(玄侑氏)

 あの、まあ一日一ミリで十五日間で15ミリシーベルトと言うよりも、一気にある程度高いのを浴びて、短期で浴びたというほうがダメージは多い可能性が高い。

  


(丹羽氏)

 それはそうです。それはもう我々放射線生物の鉄則みたいなものです。

 

(玄侑氏)

 それで、やっぱりあの毎日1ミリシーベルトっていうのは慣れるもんでしょうかね。


(丹羽氏)

 エーとですね、人間に関して、その、色々なこれまでの事故があります、放射線の事故が。それでさまざまな放射線の事故の中で、これは好ましくないね、と言う線量が出ております、これはチェルノブイリの後、その、高い線量で年間線量で何年も生活しているというふうな経験の方々から出てきたんですが、年間線量が数シーベルト、だから数千ミリシーベルトですけど、そのレベルで数年たつと骨髄の細胞がやはり具合が悪くなってさまざまな疾患が起こってくると、だから千ミリシーベルトと言うのは人間である低線量の一つの目安です。この場合のさまざまなことが出てくるというのは癌じゃないです。癌ではなくって、その身体的に弱くなるとかそういう事ですね。癌に関してはさすがにそんな高い線量でなるとあの、線量に応じたリスクの増加があるという領域にも入っておりますので。


 

(玄侑氏)

 一日?

 

(丹羽氏)

 いえ、年間数シーベルトです。年間です。

 だから一日線量でいったら、数ミリシーベルトが長年、二三年続くと、これ良くないと。


玄侑氏)

 CTスキャンが6.9ミリシーベルトとか言いますけど、

 

(丹羽氏)

 はい部位によって違いますけれど。はい。

 

(玄侑氏)

 これを、毎日やっているようなもんですね。

 

丹羽氏)

 そうですね。そうです。

 

(玄侑氏)

 あと、あの子供さんのほうが内部被曝の生体に入ったものの排出率が恐ろしく速いという事も、(はいそうです)意外にお母さんたちがご存じないんじゃないかと思うのですけれども。

 

(丹羽氏)

 はい。ほんとにそれは大人が大体セシウムの生物学的半減期と言うのが、100日から120くらいで半分に減っていく、でその大人でもたとえばカリウムなどをようけい取る人はようけい出ます。

 

(玄侑氏)

 ようけい? ようけいというのは? ああ。

 

(丹羽氏)

 だから、カリウムの摂取量が高い人は、セシウムの出方も早いという事なんです。

 

(玄侑氏)

 あー、果物をようけい食べる人は・・・・(そうです)

 

 

(丹羽氏)

 子供さんのように、あの大人の中でも、体の大きい人は出方が遅い。小さい人は出方が早い。で、子供は両方ですから、小さいし代謝は高いし、というので非常に高いと。

 

(玄侑氏)

 男と女で言いますと。男の方がやっぱり遅いんですかね。


 

(丹羽氏)

 そうでしょうね、体が大きいから。


 

(玄侑氏)

 えーあの私も調べてみましたけど、六歳児で約一か月で半減する。一歳児だと十日で半減しちゃうんですね。だから、子供さんが心配で県外に出てったわけですけれども、実は子供ってものすごく強い存在かもしれない。


 


(丹羽氏)

 うーん。そーですね。あのー。


 


(玄侑氏)

 放射線を直接浴びるという事については確かに弱い面を持っているわけですけど、内部被曝なんかについては、子供の方が圧倒的に強いんじゃないですか。


 


(丹羽氏)

 圧倒的に強いかどうかはわかんないですけれど、そのどれくらいの線量を受けるかと言うことでは子供のほうが受けにくいということは、はっきりしております。

 

(玄侑氏)

 なるほど。

 


(深野アナ)

やっぱりあとは外部被ばくと言う話に、いま移っていると思うんですよね。


 

(丹羽氏)

 そうです。


 (深野アナ)

 特に、お子さんは大人よりも地面に近い位置にいるだから地面にこびりついている(放射能の)影響は子供のほうが受けやすいんじゃないかと話す親御さんもいらっしゃると思うんですけど。

 


(丹羽氏)

 それは、だから、ご自分のお子さんとご自分とで線量計ではかられたら一番いいです。一番安心します。そうすると、その子供のたとえば胸のおなかのあたりの高さふつうは一メートルぐらいで測っておりますが、それも子供さんが低いからということで、下へ下げて測ってみて、それでどれだけの差があるのかと言うことを、ご自分が納得されるのが一番いいと思います。我々が四の五の言うより、その方が実証的でいいんじゃないかなと私はよく思います。

 

(玄侑氏)

 あの、個人的な不安を解消するためにはそれでよろしいと思うんですけれど、問題は、行政が行っている除染ですけれど、先生の専門からすると、年間一ミリ以下まで持っていくという必要性と言うのはどのようにお感じですか。たとえばあれが二ミリでしたらば、予算的な必要と言うのはかなり違うと思うんですが。

 

(丹羽氏)

あの、そのあたりは非常にあの、大事な問題で。ICRPが一ミリと言っているのは一つの理由があります。長期的には一ミリにしてくださいと書いてあるんですね、ICRPは。で、それは実は放射線のリスクから言っているんじゃないんです。これはちょっと不思議に思われるかもわからないんですけれども、そのー、人間社会の中ではICRP放射線によって人々が差別されることを嫌います。エクイティー(equity)と言う言葉でイクォリティー(equality)じゃなくて、イクォリティーというのは、何でもかんでも等分にしなさいという、エクイティーというのはその人に応じて平等にしなさいという考え方なんですが、そうするとその、一ミリの、よそは一ミリじゃなくて、東京なんかはまあ低い、で関西は高い。それで例えば差別があると困る。ましてや福島の場合その線量が高くなっているという事で、実際差別が、これは対象になっております。残念なことに。そうすると、人々が生きていくうえでそういう不平等があっては困りますねと、そうすると最終的に1くらいまで落とすというのは考えて下さいよ、と。これはエクイティーの問題であってリスクの問題ではありませんと。それはそういうふうには書いてありませんけれど、我々はそういう理解であります。ああいうことを理解しております。

 


(玄侑氏)

ただあの年間一ミリという数値が導かれてきたことについての私の認識はですね、あの発がん率が上がるのが、はっきり分かるのは年間百ミリであると。でそれを一生の間に浴びなきゃいいんだという事で、一生を百年として百で割ってみたら1だ、1になった、というそういう計算式であったと。


 (丹羽氏)

ではないんです。それはそうではなくって、まあそういう計算も出来るんですけれども、あの食品安全委員会なんかはたぶんそうやってつけた。この、あの、もともとはその、急速に1、急速に100、急速に1000を浴びた時の、一挙にぱっと浴びた時のリスク計算から始めました。

 

(玄侑氏)

ええ。その。蓄積しないというのが、今の放射線の専門家たちの常識ですよね。でもそうじゃなかった当時、あの、蓄積線量をというのをどうしても、その、時間で割るという考えかたで、出てきたんだという話を聞いたんですけど。

 

 (丹羽氏)

 あの、蓄積線量っていうのはあの放射線防護のための、これは専門家的になりすぎるんで、あまり議論しても仕方のないことかもしれませんけど、あの、蓄積線量というのはそういう線量を避けましょうと、どれぐらい蓄積、トータルが一年間でどれくらいになるかそれは避けましょうと、いうための目安として蓄積線量というのを使っております。それであの一年間で100だから、毎年100浴びてもいいんだとICRPは言っていないです、実は。でこれは、緊急時の一つの措置で、年間百ミリになるような線量率の場は避けなさいと、だからそれで年間100ミリであれば、一か月で等分でたとえば10ミリなんですかとかですね、そういういうふうな線量の場はやはり好ましくないと、で、そういうことで浴び続けよという事はさっぱり言っていなくて、緊急人の時の措置というのは百ミリまで行ったならば、やっぱり数日せいぜい一週間単位の緊急時措置でそれを解消しなければならないと。現存時というのは まあ今の状態ですけど、生き続ける、そこの中で生き続けるのであれば、1から20くらいの間の中で何とかこなしましょうと、でなるべく早く速やかに下げましょうねという概念なんですね。

 

(玄侑氏)

 まあ、防護上は蓄積するものとして考えると非常に有効であるという事ですよね。

 

(丹羽氏)

 そうです、そういう事です。

 

(深野アナ)

 まあ、今の話の中に出てきたその1から20という数字がありました。あの、おそらく福島県民もいろいろと放射線の勉強をみなさんされて、1ミリシーベルト年間というのをちょっとでも超えたらだめだというもんではないっていう事は、わかってきたと思うんですね。あの、コンビニ弁当の消費期限みたいなもんで、ちょっとぐらい経っても大丈夫だっていうのわは分かってきたと思うんですが、じゃあ1から20のあいだのどのへんなの、実際問題、っていうというところが分からないからこう、常に不安を抱えている部分でもあると思うんで、ちょっとこの後お父さんお母さんのインタビューをお聞きいただいて、その話に行きたいと思います。


 


女性C

あの、原発事故の前の基準よりは今の方が基準自体が高いんですよね。で、大丈夫って言われていますけれど、それが震災前だったら大丈夫じゃない数値なんで、本当にそれが今後大丈夫なのか、目に目ないし、それがどう影響してくるかというのかわからないので、そういう不安はありますけど。まあ、ガラスバッチとか当初はやってましたけど、それをつけることで子供が不安がってしまって、かえってもうそれを外させた方が伸び伸びとストレスかけないで育てられるのかなと思って、今はあまり気にさせないようにしてます。

 


女性D

うーん、私はそんなにみなさんほど気にはしていないです。どうかな、全く気になんないって言ったらうそになりますけど、やっぱりここで暮らしていくうえでは、気にしたら、ねえ、きりがないっていうか、というのが正直なところかなあ。ねえ、マスクもしなくなったし。でもやっぱりそういう、なんかどぶとかそうゆう道路とかさわったら、手洗いうがいはしっかりさせるようにとか、そういう程度になっちゃいましたねー。

 

男性B

あんまり気にし過ぎちゃうとやっぱり子供も気にし過ぎちゃうと思うんで、実際高いという場所には連れて行かない様にはしてますけど、それもあんまり気にしすぎちゃっても、子供も自由に遊べないで、そこは放射線が高いから行かないでとか言い過ぎるとやっぱり、子供も気になっちゃうかなあと思うんで、、、、



(深野アナ)

 という事で、その、子供さんが不安を抱えることに対するリスクをきちっと親御さんが理解しているらっしゃる方が、今回、たまたまなのかもしれませんけど多くて、今丹羽先生はうなずいていてらっしゃっていましたけれども、どうお感じになられたでしょうか。


 

(丹羽氏)

 あの、それは本当に大事で、あの、子供さんがのびのび育つという事がまず第一点。それともう一つは、それと、子供さんに全部やる必要はないのですが、あの、親御さんがご心配であれば、やはり、あの、どれほど心配しなければならないかだけは、あの理解いただきたい。すなわちやはり、ご自分の線量と子供さんのいる環境での線量がどのくらいかは常時やる必要はない、かもしれませんが把握してほしいなあと。というのは、あの、これを把握することは様々な意味で、あの、これからの役に立つ。なぜかっと言いますと。福島というのは特殊な目で見られる、私それ非常に嫌なんです。まあ、それがためにこっち側に、押しかけ女房(みなの笑い)になってきたもんで、あの、そうするとその、実際に測ってみると、個人で測ってみると、さきほどもおっしゃいましたように、関西と下手したらようけい変わらんよねっという事になってしまいます。で、そうするとなんでそんなことで君たち差別するんだよ、おかしいんでないのと、こういう風にちゃんと言えます。やはり我々も、その、自分たちの状況を把握して、あなたがたね、そんなこといえる立場かよと、という風に言えるまで、私はやっておく必要があるんではないかなと、私はまあ、外の人間ですから、逆に偉そうに言うなと、なに言ってんだと、てめえ測ったかよと、俺測ったんだと、それで、こうだよと、だからあんたは、偉そうに言えないよねと、こういう議論もします。

 


(深野アナ)

うーん。全国のデータがないから、議論ができないということも、福島県民にとっては、このおかしいところでもあるんですね。

 

(玄侑氏)

だと思いますね。それでやっぱりあの、全国のお寺さんに頼んでって言うのもやりましたけど、(えーえ、)(深野声)あのー、2002年にですね、長瀬ランダウアという(アー、ハイハイ)(丹羽声)、線量計の会社が、全国149000か所で線量を測ったデータがあるんですね。で、それを見ると非常に面白いんですけれども、年間1ミリシーベルトを越している県が11県あるんですけども。そのデータが面白いっていうのは、まあその北陸から西に11県が固まっているという事もありますけれども、20年前のデータと比べた時に違ってきているんですね、(ほー)(丹羽)、(ほー)(深野)、で、その何が違っているかというと、一位の県も違ってきています、14万9千ていうことは一県当たりの測定箇所もかなり多いですから、ある程度信用できると思うのですけれども。トップがもともとウラン鉱床のある岐阜県だったのが、それを抜いてですね、ええ、まあ富山県が一位になってきたのが2002年、(ほー)(深野)、で、あのー、福島県は今どんどんどんどんこう自然の力のおかげで下がってきていますけども、今現在じわじわと上がってきているところもある、という所がむしろこう、今後大きな問題じゃないかという気がするんですけれども。


(丹羽氏)

アーなるほど、私自身は、あの実はこの線量計はですね、全国の高校生さんに持っていただいて、それでまあ全国たって千人も一万人も無理なんですけれど、それと同時に同じ線量計を、世界の高校生さんに持ってもらって、それではかって、それで全部まとめて、世界でどういう状況であるかと、でそんなようなデータをやはり福島県の方々が共有し、国内の方々が共有する、と。世界の人も共有すると、そうゆうふうな事が、私としては、まあ、外から来た人人間で唯一出来るぐらいのことかなあ、なんておもってやってはおりますが、あの、やろうとしておりますが、とにかく自分の状況を把握してくださるというのは、内部被ばくにしろ、外部被曝にしろやはり非常に大切ではないかと思っております。はい。

 


(玄侑氏)

まあ、そのことは非常に大切なことだとは思っているのですけれど、なにせ、結果が出るのに時間がかかりますので、(そうです)(丹羽)、とりあえずあの、西暦2000年に国連の科学委員会が発表したものですけども、まあ、いろんな国のですね、年間1.5ミリ未満のところに住んでいる人口と1.5ミリから3ミリまでの間に住んでいる人口と、それ以上のところに住んでいる人口というのを、人口で表したものがあるんですけれど、これですと日本国内の場合、1.5ミリ未満のところが48%なんですね。1.5ミリを超える方が52%と多いわけですよ。私はこの事実だけで、いいかげん安心したらどうかと思うんですけどね。


(深野アナ)

うーん、いま話が出てきた1から20、100まである中で、まあこれから先、帰還に向けては1ミリではなくて、じゃあ2ミリではどうなんだ、5ミリはどうなんだ。10ミリはどうなんだ。ここでこれから葛藤が、おそらく今避難されている方のあいだで出てくると思うんですけど、そこについてはどう評価してどう提示すればいいんでしょうかね。

  

(丹羽氏)

これはICRPが使っている、ゾーンの、直線しきい値なし仮説、これにあの、一つは放射線のリスクは準拠して考えたらいいと、だから、癌の今の我々が33人に一人が死ぬ状況が、なんと30%ががんで亡くなる状況が、いくら増えるというのはどっかへ、ここへしまっておいたらいい、ただ、一番大事なのは、それが1ミリが2ミリであれ、2ミリが3ミリであれ、実際個人線量でこれはまず評価するべきであり、(はい)、というのは生活者っていうのは全部違いますから。それでそれをベースにして自分の物差しをお持ちになったらいいのではないかと、私自身は思っています。それで、さらに大事なのは、私は福島に来て、この県がやはり非常に美しい県である、で、それの中で、ずいぶんこう十何代とかここに住み続けている、おられる方なんかが結構いてですね、あ、すげーとこなんだと、私はサラリーマンの息子ですから、あっちいったりこっちいったりの生活で、あの、思いましたし。また、あの文化的にはたぶん西日本とは違って、縄文の系譜を非常に色濃く持っておる土地柄のように思います。で、そのような中で住むってことの価値、それを大事と思う方はそれを取ればいい、でもそれでも私は放射線が嫌だという方は、ここで住まない選択をなさったらいい。でこれは一律何ミリシーベルトがいいとかいう問題ではないと思っています。それで高ければ自助努力で、あるいは行政によって一生懸命下げたらよい。で、だからそこら辺の線引きをどこでやるかというのは、下手をすると非常に不毛な議論になります。(うーん)で、そう議論にすればするほど、生活リスク、ここ目の前に迫っている生活リスク、自分の大事な美しい故郷とかですね、そういうプライドに、尊厳に準拠するところを壊して、その一ミリ二ミリの議論をするというのは私は違和感がございます。

 

(深野アナ)

でも玄侑さん、私たちはどうしてもこうどっかにこう、値を求めたくなって、例えば今3にしたとして2.93.1が全く別物に見えるわけですよね。


(玄侑氏)

 そうです。

(深野アナ)

これは危険なことだから、あえてここだって言わない方がいいという事なんですけれども。

 

(玄侑氏)

あのー、先生のおっしゃる通り、やっぱり人は放射線で生きているわけではないですから、まあ、なんていうんですかね、同じ線量でも自分の抱えている物語、生きているベースによっては全く気にならない人たちもいるわけですよね、それどころじゃないというケースもあるわけだし。あのまあ、そこを加味しないと分からないことではあるんですけども。でも国は一律の基準を出すべきかどうかは、いまとなると言えないと思いますが、ある機関として、まあICRPになるのか何処になるのかわかりませんが、あのー、怖がったら全部支援するというような、安心と安全を、こうごたごたにしちゃったというような状況というのは、やっぱりその一つの学問の世界から警告を発してほしいという気がするんですね、そんなに怖がることはないんだよという、この数値は。

 

(丹羽氏)

えーと、それに関しては今の学問で皆さんが、私の言葉でじゃなくて、こういうリスクケースがあります、千ミリシーベルトあたりいくらいくらの癌の増加と。そのリスクケースで今ご自分が受けている、これまで受けてきた、事故の前まで受けてきた、たぶん年間0.5だと思います。それに医療の線量とかとかそんなのが重なって普通の人間、宇宙線とかそんなのが重なって、2とかいう線量になってる訳ですけど。それと比較して、いまのところ、外から受けるγ―線の線、今ですよね、が、0.5増えてるんですね。ここで私が1という事は、福島のもともとが、0.5だったとしたら、あと0.5の加算があったっていうこと。で、そういうことに関して実際計算なさったらいいです。で、これで一生積み重なって、そうすると、普通の日本人ならば2ぐらいで70年80年って、150ミリです、受けます、生涯で、まあ、いやな集積線量ですけれど。で、線量を過剰、過大に評価している国連科学委員会は初年度線量4ミリですと言っています。あの、福島でのね。で、初年度線量の大体2.5倍が大体の生涯線量になるんです。(ほー)。ずーと、ざーと落ちていきますから。で、そうすると、4ミリに2.5倍を掛けたら10ミリシーベルトです。10ミリシーベルトが福島の人の追加線量ですと。100ミリシーベルトに、いや150に10がくっつくという事になります。160になります。(はい)。それがすごくおっきい差かどうかというのは、それはその方の判断です。我々が、結局それは大したことはないでしょと言っても、こわいものは怖い。これは私、こちらへきてもう、身をもって体験しましたから。


(玄侑氏)

 ただその放射線量を受けた時に受けた時に生ずるリスクというのは、おもには放射線を浴びることで生体の中の水分が活性酸素を生み出して、その活性酸素がこう細胞に悪さするという面があると思うんですけど。体内の活性酸素を発生させてるメインの原因は呼吸ですよね。(丹羽氏)ミトコンドリアです。

 要するに、その、なんていうんですかね、私ら、この、吸った息を吐ききらないうちにまた吸っているわけですよね。どんどんどんどん、だって、我々お経をあげるときの息の長さっていうのは、通常の呼吸の二倍三倍はいきますから、それだけほんとは吐けるんですね。吐けるはずなのに、まだあるのに吸い続けてますから、あのー、活性酸素をどんどん生み出しているわけで。私は、放射線気にするよりも自分の呼吸気にした方がいいよっていう話を(笑い)、してるんですけどね。

 

(丹羽氏)

あのー、呼吸に関しては、まあ、言ったら、また話がどんどん広くなるんで、ほんとにあの、呼吸とかそういうような気とか大事で、私も若いころ剣道をやっておりましたので、(はー)私の、あの、剣道のお師匠さんは、70ぐらいで当時剣道九段の方でしたが(ほー)、それがやはり呼吸のことはよく言っておられました。はい。


(深野アナ)

 まあ、そのリスクの話は、今呼吸の話も出てきましたけれども、それからインタビューでもお聞きいただいた、その、不安を抱えるという事に対する精神的リスク(はい)、これもいろいろありまして、まあ、そろそろまとめていかなくちゃと思っておるところなんですが、その、なんていうのかな、いま福島県民は、こう、放射線がやっぱりベースにあって(はい、そうです)、それでその、まあ怖いと思われたりとか、でどうしようかと思ってらっしゃる方がいらっしゃる中で、やっぱりでも、それとは別次元で、失われたものがものすごくたくさんあって、


(丹羽氏)

 そうです、ものすごくたくさんあります。大変なものです。それはもう、それが切ないですね、思うだに。だからあの、それが一番、私にとっては大きな問題で、あの、福島で起こっていることはもちろん放射線がもたらしたことではあるんですけど、この大変な社会状況はなぜなんだと、それが私の一番基本です。で、それを理解しないと、あの、これはよくないと、いう事で、ここで一生懸命理解に努めております。それで、やはり怖いものは怖いと言ったら、やっぱり怖い。でも、いま言ったように初年度線量4ミリ、初年度線量4ミリ浴びている人はそういないです福島の中でも。それでどんどん低下してくことから逆算して、生涯線量がこうなりますというのが10ミリです。初年度線量の2.5倍、これ鉄則です。チェルノブイリでもそうでした。だからチェルノブイリでは初年度線量は10いくつぐらいだったですね。それでそれの2.5倍で、35ミリ、あそこの集団の、チェルノブイリ周辺の集団が、35ミリという数値が出ております。だから、それがまあ一応世界のスタンダードです。サイエンティストとしていえるのはそうで、そうすると追加線量としてそれが、我々が普通の生活をしていく中で受ける線量と、比較してどうなんだと、生涯に(はい)。そういうに考えていただいた一つのこれは目安になると思います。いまの線量だけにとらわれるんじゃなくって、(うーん)。そういうような意味で集積線量というのはこういう使い方ができる。

 

(玄侑氏)

まあ、人生において、この、放射線の問題がこんなに大きくなってしまうっていうこと自体が不幸だと思うんですけど(えーえ)、やっぱり、こう、人生を支えている事っていうのは、どこで何をして暮らすのかっていう事だと思うんですけど、それが、その、さっき先生もおっしゃったように、代々この土地でやってきたっていう人たちが多い福島県で、その土地を離れて、で仕事もなくなって仮設にいるっている人たちは、ほんとに人生のベースを失ったわけですよね。(おっしゃる通りです)やっぱり、その放射線の問題よりも、って言ったらへんですけども、そういう問題で彼らはいま苦しんでいるんではない。

 

(丹羽氏)

 本当に、それね、良くないです。(えー)こんなひどいことないです。

 

(玄侑氏)

だからその、結局解決しなきゃなんない問題というのは、みんながどこで何をして生きていくのかっていう、ところが解決されるように、丹羽氏(そうです、そうです、おっしゃる通り)なってほしいですね。

 

(丹羽氏)

 それが、やはり、この事故の一番大きい問題です。(ええ)それをその放射線というもので、いろいろぶれましたので、ますますその状況がひどくなった。(ええ)それが私なんかのサイドとして、一番嫌なことです。

 

(なるほど)

 

(深野アナ)

放射線を自分の目の前、進行方向のど真ん中に置くんではなくて、ちょっと横側において、(じぶんは、何を、今はしなければならないのか、丹羽)、いけないのかというそっちをメインに考えていかなきゃいけない。

 

(丹羽氏)

生活はなんなんだ。で、それで私の人生の価値はなんなんだ。と、それがまずは基本ですから。それで放射線はワンオブゼムです。

 

うーん(玄侑)

 

(深野アナ)

えー、一時間にわたりましてお話を伺ってまいりましたが、ラジオをお聞きの皆さんの、その心の奥底の不安が少しでも解消されればうれしいという風に思います。

 

(丹羽氏)

アー、そうなってくれたら本当にうれしいですけど。

 

(一同)

 はい。